博士(Ph.D.)を取得し、大手メーカーに就職した、ジン博士です。
国民年金における学生納付特例制度は、超が付くほどお得な制度だと判断し、博士課程修了まで毎年申請していました。お得な効果を最大にする考え方を共有します。
この記事の概要
・卒業ギリギリまで学生納付特例を利用すると、節税効果を最大にできる。
・追納するタイミングは、就職2年目以降に給料が大きく伸びるまで待つ。
たとえ大学生であっても、国民年金を納めることは20歳以上の日本国民の義務である。本記事では割愛するが、あらゆるメリットを考えるとしっかり納めるのが得策だ(税金や保険の勉強をした人ならば、おおよそこの結論になるのは間違いない)。したがって、本記事では保険料はしっかりと満額納めることを前提とする。
中には、学生の間は両親が代わりに納めてくれるという家庭もあるかもしれない。そういう人は学生の名に免じて、両親に負担してもらうのが最もお得であることは間違いない。本記事では、学生の時から国民年金保険料の支払いを自分で負担するという人向けに、なるべく支払う総額を減らす『節税』技を紹介する。
国民年金保険料は一種の税金
全員が必ず国に納めるお金ということで、国民年金保険料はある種の税金と見なすこともできる。大学生にはあまり馴染みがないかもしれないが、就職すれば、所得税や住民税などの他の税金もたくさん払う。税金を素直に払い続けるという選択ももちろん悪くはないが、仕組みを知っていれば、これら税金の支払い総額を減らすことができる。仕組みを知っているか知らないかだけで、年間数万円以上も差が出てくるのだ。そして、20歳以上の学生ならば誰でも使える『節税技』が、学生納付特例である。
学生納付特例とは
日本国内に住むすべての人は、20歳になった時から国民年金の被保険者となり、保険料の納付が義務づけられていますが、学生については、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられています。~中略~ 老齢基礎年金を受け取るためには、原則として保険料の納付済期間等が10年以上必要ですが、学生納付特例制度の承認を受けた期間は、この10年以上という老齢基礎年金の受給資格期間に含まれることとなります。
日本年金機構 ”国民年金保険料の学生納付特例制度” https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150514.html
つまり、国民年金の受け取り資格に傷をつけずに、保険料の納付を猶予できる制度である(未納とは異なり合法的だ)。ただし、猶予を受けた分を10年以内に追納しなければ、老後に受け取れる年金額が減ってしまう。よって、老後の年金を満額受け取りたい人は、卒業後に追納するというのが一般的だ。
結局あとで納めるならば、後回しにせずに先に払っておきたいと一部の人は考えるかもしれない。結論から言うと、それはかなり損をする。年間100万円程度の稼ぎしかない大学生は、学生という特権をふんだんに使って、学生納付特例を申請していこう。事項からその背景を説明する。
国民年金保険料は全額、社会保険料控除の対象
ある年に国民年金保険料を納めた場合、全額分が社会保険料控除の対象となる。追納した分についても、全額が対象だ。この部分が、節税を考える上で肝心なところである。住民税や所得税は、ある年に稼いだお金(課税所得)に決まった税率を掛けて算出する。すなわち、なるべく納める税金を減らしたければ、課税所得を減らす工夫をすれば良い(節税の基本的な考え方)。全額が社会保険料控除の対象になるということは、保険料を払った分と同額分は課税所得を減らしても良いですよ、という意味である。見かけ上、課税所得を減らすことができる。結果として、税金の支払い額を減らすことができるのだ。
しかし、たいていの学生は、アルバイト収入などを年間100万円程度以下に抑えていると思う。その場合、給与所得控除や基礎控除のおかけで、実際の課税所得金額はゼロである。その年に年金保険料を納めても、そもそも課税所得がないので、納付全額分が社会保険料控除の対象になるという上記メリットが得られない(そもそも払う税金がゼロ)。したがって、まずは支払いを猶予して、就職する。その後、課税所得が発生する年に保険料を追納するのが、総合的にはお得ということになる。
節税額を具体的に計算
Aさんを例に考える。
・AさんはR1年とR2年に大学生で、課税所得金額は0円である(アルバイト収入が100万円以下)。
・R3年とR4年は会社員で、課税所得金額はR3年は200万円、R4年は300万円である。
・簡単のためにR1年とR2年の国民年金保険料は、月額16,000円定額とする。
R1年 大学生 課税所得0円(アルバイト収入100万円)
R2年 大学生 課税所得0円(アルバイト収入100万円)
R3年 会社員 課税所得200万円
R4年 会社員 課税所得300万円
問題
①大学生の間の国民年金保険料を猶予せずに払う場合と、②学生納付特例で納付を猶予したのちR4年に一括追納する場合を比較して、保険料・住民税・所得税の支払い総額に4年間でどれだけの差が出るかを考える。ただし、会社員での年金保険料は、どちらの場合でも同額払うのでここでは考慮に入れない。保険料を追納する場合、経過期間に応じた加算額が上乗せされるが、額としては大きくないので、この例では考慮に入れない。
結果
②が、76,800円お得である。
計算過程
①大学生の間の国民年金保険料を猶予せずに払う場合
R1年
国民年金保険料 16,000円×12カ月=192,000円
住民税 課税所得0円×住民税率10%=0円
所得税 課税所得0円×所得税率0%=0円
R2年
国民年金保険料 16,000円×12カ月=192,000円
住民税 課税所得0円×住民税率10%=0円
所得税 課税所得0円×所得税率0%=0円
R3年
住民税 課税所得200万円×住民税率10%=200,000円
所得税 課税所得200万円×所得税率10%-控除額97,500円=102,500円
R4年
住民税 課税所得300万円×住民税率10%=300,000円
所得税 課税所得300万円×所得税率10%-控除額97,500円=202,500円
(大学生分の年金保険料)+住民税+所得税の合計 1,189,000円
②学生納付特例で納付を猶予したのち会社員2年目で追納する場合
R1年
国民年金保険料 0円
住民税 課税所得0円×住民税率10%=0円
所得税 課税所得0円×所得税率0%=0円
R2年
国民年金保険料 0円
住民税 課税所得0円×住民税率10%=0円
所得税 課税所得0円×所得税率0%=0円
R3年
住民税 課税所得200万円×住民税率10%=200,000円
所得税 課税所得200万円×所得税率10%-控除額97,500円=102,500円
R4年
国民年金保険料 16,000円×(大学生の2年分)=384,000円
住民税 課税所得(300万-384,000)円×住民税率10%=261,600円
所得税 課税所得(300万-384,000)円×所得税率10%-控除額97,500円=164,100円
(大学生分の年金保険料)+住民税+所得税の合計 1,112,200円
補足
上記二例の差額 ①1,189,000円-②1,112,200円=76,800円
したがって、②の方が税金の支払い総額は、76,800円少ない。
ただし保険料追納の加算が数千円程度あるので、実際にはもう少し差が縮まるが、それでも②がお得であることは間違いない。
※ここでは簡略化のために考慮しなかったが、実はさらに健康保険税という別の税金の節税にもつながる。その効果は次の年のR5年に効いてくるので、同様に考えてみると良い。
節税を最大化させる追納するタイミング
上のシミュレーションでは、Aさんは就職してから2年目のR4年に追納しているが、さらにその後に年収が上がることが明らかな場合は、追納の時期はもっと遅らせるのが良い。
ただし、追納は10年以内という決まりがあるので、R1年分を追納できるのはR11年頃までであることに注意する。
さらに計画的な人生プランが決まっているようならば、年収によって料金が変わる子供の保育園入園の前年に一括追納するという手もある。
いずれにせよ、年金の追納は全額が課税所得を減らす効果を持ち、そのメリットを最も享受できる年を狙って追納することをお勧めする。
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