私は博士(理学)の学位を取得してから企業に就職し、企業研究者として働いています。この記事では、私がアカデミックに進まずに民間企業に進んだ理由を、意見ベースで記します。
ポジティブな理由
「あなたはなぜアカデミックには進まないのですか?」
この質問は就活時の面接でお決まりで聞かれていました。こういう場面ではもちろん、民間企業にすすむポジティブな理由を話しましたので、まずはその切り口から。
社会に実装する研究がしたい
企業の研究部門とアカデミックでは、最終的なゴールが異なります。企業の研究部門では、いつかは事業化を目指して研究を進めます。一方のアカデミックは、内容によっては社会実装に近い領域はありますが、基本的な軸足は知の創出です。両者の最終的なゴールは異なります。
私は自身の携わった研究成果が社会に実際に役立ち、身の回りの人たちの生活がより豊かになって欲しいと考えていました。最終目的が製品化や事業化である企業研究であれば、私の夢をより実現できるのではないか、少なくともその可能性は高いと思い企業研究者の道を選択しました。
ネガティブな理由
アカデミックを選べないと思った理由です。
給料が安い
民間企業と比較して、アカデミックポジションの給料は基本的に安いと感じてしまいました(参考)。博士を卒業して、ポスドクや助教、国立研究所の研究員などに進んでも、大企業の総合職の給料には及びません。ちなみに、日系製造業での博士卒の初年度年収は下記の記事で紹介しています。
私の場合は、博士課程在学中に結婚して子供が一人生まれていましたので、アカデミックの給料で自身が満足する生計を営むのは不可能だ判断しました。
ポストが少ない
常勤ポストの数がとにかく少なく、なかなか安定した雇用を得られないと思ったからです。ポスドクから助教になれたとしても、その先のポストである准教授になるためには、熾烈な競争を勝ち抜かなければなりません。
私の尊敬する助教の先生が准教授のポストに応募し続けているにも関わらず、30代後半に差し掛かっても面接にも呼ばれない状況を目の当たりにしました。
さらに、ポスドクや助教は雇用期間が決められているのが一般的であり、契約が更新されなければ次のポストを強制的に探さなければなりません。
アカデミックの世界で生き残るには、並外れた研究の実力に加えて、タイミングや運も必要です。
家族の将来を巻き込んでまで、そのような賭けに突き進む覚悟を、私は持ち合わせていませんでした。
まとめ
振り返ってみると、私なりに最善の選択が出来たと今は思えます。
私自身は抜け出してしまいましたが、日本の科学技術を支える基礎研究従事者の処遇を改善できないものでしょうか。
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